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東京地方裁判所 昭和29年(ヲ)125号 決定

本件の場合執行吏としては申立人の委任に従う執行行為の実施を拒むべきではない。

二、理  由

(申立人の主張)

異議申立人は、主文と同趣旨の決定を求め、その申立の原因として次の通り主張する。

別紙目録<省略>記載の自動車は、いずれも申立外、第一交通興業株式会社(旧商号第一交通株式会社)の所有に属するところ、申立人は同会社を債務者とし昭和二十八年二月三日、東京地方裁判所昭和二八年(ヨ)第五三六号を以て右各自動車に対する仮差押の決定を得て、同月五日それぞれ自動車登録原簿に、その旨の登録を経たが、更に同年十二月七日、同地方裁判所昭和二八年(モ)第一五〇三八号を以て、右各自動車に対する監守保存処分の決定を得た。よつて申立人は、右監守保存処分決定(及び同庁同年(モ)第一五六六九号更正決定)の正本に基き、右各自動車に対する監守保存処分の執行を東京地方裁判所執行吏内村寅吉に委任したところ、同執行吏代理日野慶一は、昭和二十八年十二月二十八日右委任に従う執行行為を行うにあたり、右各自動車に対しては同年九月十八日より同年十一月二十一日に亘る間においてそれぞれ国税滞納処分としての差押が為されていることを以て、右執行は不能なりとして、その実施を拒んだ。然しながら本件監守保存処分決定は、右の如く仮差押に基くものであるところ、自動車登録原簿上、右国税滞納処分による差押の登録は、いずれも申立人のための前記仮差押の登録の後に為されており、且つ右各自動車の占有は右滞納処分による差押登録後も依然として債務者たる前記申立外会社に属しているのであるから、執行吏の監守保存処分の執行が不能であるといういわれはない。而も申立人の委任に従つて執行吏自ら右各自動車の監守保存を為すことは、その担保価値を確保する点で国税滞納処分の実施にとつても利益となることであつて、本件執行吏代理が執行行為の実施を拒絶した措置は、法令上も実質上も失当である。

(判断)

申立人主張の事実関係は、申立人提出の証拠書類及び当裁判所が取寄せた当該執行事件記録に徴して、すべて認め得るところである。

そこで執行の目的たる自動車に対し国税滞納処分としての差押が存する場合に監守保存処分決定正本に基く執行吏の執行行為が実施不能となるか否かの点のみが問題となる。

本件執行の債務名義たる監守保存処分決定は、目的物たる自動車に対する債務者の占有を解き債権者の委任した東京地方裁判所執行吏にその保管監守を命ずることを以て旨趣とするところ、前記認定の如く本件執行にあたり目的たる自動車はすべて債務者たる前記申立外会社の占有に属していたのであるから、執行吏として本件執行行為を行うにつき国税滞納処分としての差押処分あるが故に、その実施が事実上不能であると為すべき原因は存しなかつたものといわねばならない。又執行の目的物たる自動車につき国税滞納処分としての差押処分が為され、自動車登録原簿にその旨の登録があることを以て、当該自動車に対しては仮差押に因る監守保存処分決定正本に基く執行吏の執行を許さずとする法令上の制約も存しないのであるから、本件執行吏代理が本件執行行為実施を執行不能として拒絶した措置は失当というの外なく、その他の点に関する申立人の主張につき判断する迄もなく本件異議は理由があるから、主文の通り決定した。

(裁判官 安倍正三)

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